こんにちは。ドローン専門行政書士の宮崎です。
田んぼでのドローン活用を検討する際、「自分の土地だから許可は不要だろう」と考える方は少なくありません。
しかし田んぼの上空であっても、ドローンの飛行目的や周囲の環境によっては国土交通省の許可が必要になります。
特に農薬散布においては、自分の土地であっても制度上の特例や屋内飛行を除き、原則として許可・承認の手続きが義務付けられています。
ここでは田んぼでのドローン飛行に必要な許可の種類と、農薬散布における4つの手続きを整理しました。さらに、申請の手間を効率化する「包括申請」の仕組みについても解説します。

本記事を読むことで、違反リスクを避け、適切に農業用ドローンを運用するためのステップがわかります。
田んぼの上空でドローンを飛ばすのに許可が必要なケースとは

田んぼの上空でドローンを飛行させる場合、目的や飛行条件によって国土交通省の許可が必要かどうか、が決まります。
2022年6月の航空法改正により、重量100g以上のドローンはすべて規制対象となりました。
飛行の態様が「特定飛行」に該当する際は、事前の許可や承認が義務付けられています。
単なる生育状況の確認などであれば、許可が不要なケースもあります。しかし冒頭でお伝えしたとおり、農薬散布を行う場合は原則として事前許可が必要です。
また航空法だけでなく、民法や農薬取締法など複数の法律が関わってきます。適切にドローンを活用するためには、これらの法的要件を正確に理解して手続きを進めることが求められます。
宮崎のひと言アドバイス
「自分の土地だから自由に飛ばせる」と勘違いされている方は現場でも少なくありません。
航空法は土地の所有権とは別で、空の安全を守るためのルールです。まずはご自身の飛行目的を明確にすることから始めましょう。
【目的別】田んぼでのドローン飛行に必要な許可まとめ

1. 自分の田んぼで「空撮・生育状況の確認」をする場合
自分の田んぼで生育状況を確認するための空撮などを行う場合、特定の条件を満たせば事前の飛行許可は不要です。
許可が不要となる具体的な条件は以下のとおりです。
- 人口集中地区(DID地区)に該当しない場所であること
- 日中に機体を直接目視して飛行させること
- 第三者や第三者の物件から30m以上の距離を保つこと
ただし実際の田んぼ周辺には、電柱や農道(通行人・車両)、倉庫や他人の建物などがあります。これらの物件から30m以上の距離を確保するのは非常に困難です。
また手元のモニター画面を見ながらの操縦は、目視外飛行とみなされます。そのため、結果として許可が必要になるケースが大半を占めます。
宮崎のひと言アドバイス
「田んぼの真ん中だから大丈夫」と思っていても、離着陸の際に農道や水路に近づきすぎて違反になる失敗例がよくあります。
具体例とすれば、「離着陸しようとしたとき、農道を走ってきた軽トラや歩行者に近づきすぎた」という場合などです。
周囲の環境は事前にしっかり確認してください。
2. 自分の田んぼで「農薬散布」をする場合
自分の田んぼであっても、ドローンで農薬や肥料を散布する場合は、原則として事前に国土交通省の承認を取得しなければなりません。
農薬の空中散布は、航空法において「危険物輸送」および「物件投下」という特定飛行に該当するためです。
制度上の特例や、ビニールハウス内などの完全な屋内飛行を除き、事前にDIPSなどでの手続きが必要です。
さらに使用する農薬は、農林水産省にドローン散布用として登録されている種類を選ぶ必要があり、農薬取締法にも注意を払う必要があります。
【補足】
現在の農業用ドローンは、事前にルートを設定して飛ばす「自動飛行」が主流となっています。
しかし自動飛行であっても、農薬散布は危険物輸送や物件投下に該当するため、事前に許可・承認の手続きが必要です。
※ 自動飛行に関する詳細は、「ドローン自動飛行の申請手順|許可不要のケースや目視外飛行の条件」で取り上げています。
宮崎のひと言アドバイス
地上用の農薬をドローンで撒くトラブルが過去にありました。これは農薬取締法違反となり罰則の対象となるため、必ずドローン用の適用薬剤を確認して購入してください。
3. 他人の田んぼの上空を飛ばす場合(民法上の注意点)
業務の依頼や飛行ルートの都合で、他人が所有する田んぼの上空を通過する場合は、民法の規定に注意が必要です。
民法第207条では、土地の所有権はその上空にも及ぶと定められています。
国土交通省の飛行許可を得ていても、他人の土地の上空を自由に飛ぶ権利は与えられていません。
特に低空飛行や、農薬散布などで他人の田んぼ上空を通過・飛行する場合は、土地所有者の権利を侵害する恐れがあります。よって、事前に所有者からの同意を得る必要があります。
宮崎のひと言アドバイス
近隣トラブルを防ぐためにも、口約束ではなく書面やメールで飛行の同意を残しておくことを推奨します。後になって「聞いていない」と言われる事態を避けるためです。
農業用ドローンの飛行申請・手続きの流れ

農業用ドローンを適切に運用するための基本的な手続きは、大きく4つのステップに分かれます。
STEP① 農業用ドローンの「機体登録」とリモートID
重量100g以上のドローンは、国への機体登録が義務付けられています。購入後はまず、国土交通省のシステム(DIPS2.0)を通じて登録申請を行い、発行された登録記号を機体に表示します。

同時に、機体情報を電波で発信するリモートID機能の設定も必要です。
リモートIDが内蔵されていない機体の場合は、外付けの機器を取り付ける対応が求められます。
※ 機体登録の詳細は、「100g以上のドローンの機体登録ガイド|DIPS申請の流れと費用【専門家が解説】」で取り上げています。
宮崎のひと言アドバイス
機体登録の有効期間は3年間です。更新時期を忘れてしまい、いざ農繁期に飛ばせないという事例が多いので、登録日はカレンダーに記録しておきましょう。
STEP② 国土交通省への「飛行申請」(許可・承認)

農薬散布などの特定飛行を行うには、DIPS2.0のシステムを通じて飛行許可・承認申請を行います。
審査には原則として10開庁日程度の時間がかかります。書類に不備があるとさらに時間がかかるため、作業予定日から逆算して余裕をもった申請が必要です。
飛行申請の詳細に関しては、「ドローン許可取りマニュアル|特定飛行の条件・包括申請の手順から代行費用まで」で取り上げています。
※ここにDIPS2.0の申請画面や手続きの流れの図解画像を挿入
宮崎のひと言アドバイス
初めて自分で申請する方は、機体の適合証明や操縦者の経験証明でつまずくことが多いです。
事前にマニュアルをよく読み、必要な情報や操縦者の実績・資格データなどをあらかじめ用意しておくとスムーズです。
STEP③ 「飛行計画」の通報と農薬散布計画書の提出
飛行許可を取得した後も、実際にドローンを飛ばす前には「飛行計画の通報」が義務付けられています。
いつ、どこで飛行させるのかを事前にシステムへ登録しましょう。
これに加えて、散布を行う自治体によっては、独自に農薬散布計画書の提出を求めている場合があります。管轄の役所への事前確認も忘れないようにしてください。
宮崎のひと言アドバイス
飛行計画の通報はスマートフォンのアプリからも可能です。ただ、現場は電波が悪いこともあるため、前日の夜に自宅などの通信環境が良い場所で登録を済ませておくのが確実です。
STEP④ 飛行日誌の作成・保管義務
特定飛行を行った際は、飛行日誌の作成と保管が法律で義務付けられています。飛行日誌は以下の3つの記録で構成されます。
- 飛行ごとの日時や場所を記す飛行記録
- 飛行前後に機体の状態を確認する日常点検記録
- 定期的なメンテナンス履歴を残す点検整備記録
これらを作成・携行していない場合、10万円以下の罰金が科される可能性があります。
宮崎のひと言アドバイス
手書きのノートでも法律上は問題ありません。ですが、記載漏れを防ぐためにも、スマホの専用のアプリやエクセルのフォーマットを活用し、記録を習慣化することをおすすめします。
農薬散布の手間を減らす「包括申請」とは?

ドローンの飛行申請には、飛行する日時や場所をその都度指定する「個別申請」と、一定の期間と範囲をまとめて申請する「包括申請」があります。

農薬散布を継続的に行う場合、日本全国を対象に1年間の期間で許可を得る包括申請が一般的です。
包括申請を取得しておけば、天候の急変で散布日を変更する場合や、急に別の田んぼで作業を頼まれた場合でも、改めて申請し直す手間が省けます。
包括申請に関する詳細は、「ドローン包括申請における「独自マニュアル」の必要性と書き方【行政書士が解説】」で取り上げています。
宮崎のひと言アドバイス
包括申請は非常に便利ですが、許可された範囲や条件を逸脱してはいけません。
マニュアルに記載された安全対策を常に守ることが大前提となります。
ドローン農薬散布ガイドラインと遵守すべき安全基準

農林水産省が定めるガイドラインに従い、ドローンでの農薬散布時は周囲の安全を確保する体制づくりが求められます。
具体的には以下の基準を守る必要があります。
- 田んぼの周辺に立ち入りを制限する管理区画を設けること
- 近隣の住民や養蜂家に対して事前に作業の予定を伝えること
- 補助者を配置して第三者の不意な侵入を防ぐこと ※1
(※1看板やコーン等で立入管理区画を明示し、第三者の立ち入りを確実に制限できる場合は、補助者なしでの運用も可。)
※ここに立入管理区画と補助者配置の図解画像を挿入
宮崎のひと言アドバイス
ドローンの風圧で農薬が隣の畑に飛散する「ドリフト」にも警戒が必要です。風速が基準を超える場合は、無理に作業を行わず散布を中止または延期する判断が重要です。
自分で散布する?業者に依頼する?|ドローン農薬散布料金の目安

ドローンでの農薬散布を導入する際、自前で機体や許可を揃える「内製化」と、業者や農協に頼る「外注」のどちらを選ぶべきか迷う方も多いでしょう。
この判断は、主に作付面積や年間の防除回数によって決まります。
| 比較項目 | 自分で機体を購入して散布する場合 | 散布代行業者に委託する場合 |
| 初期費用(導入時) | 約100万〜250万円(機体本体、バッテリー、充電器、講習費等) | 0円(機体などの購入費用は不要) |
| ランニングコスト | 年間約20万〜50万円(定期点検、保険料、登録更新等) | 10aあたり 約1,500円〜3,000円(農薬代別) |
| 申請・管理の手間 | 機体登録、飛行許可申請、飛行計画通報、飛行日誌の管理が必要 | 申請や安全管理は業者が対応(日程の調整のみ) |
| 散布タイミング | 天候や病害虫の発生に合わせて最適な時期にすぐ散布可能 | 業者の予約状況に左右され、適期を逃すリスクがある |
| 損益分岐点の目安 | 作付面積が 3〜5ha以上、または年3回以上散布する規模 | 1〜2ha未満の小規模圃場、兼業農家 |
散布代行の相場は10a(1反)あたり1,500円〜3,000円程度(1haあたり約1.5万〜3万円)です。
作付面積が数反〜2ha未満の小規模農家であれば、機体を購入するよりも外注した方が、費用対効果が高くなります。
一方で、3〜5haを超える規模や年複数回の防除を行う場合は、自社導入した方が中長期的なコストを抑えられ、天候に合わせた迅速な防除が可能になります。
国の「強い農業づくり総合支援交付金」や自治体のスマート農業補助金を活用すれば、初期投資を1/2〜2/3程度抑えることも可能です。
宮崎のひと言アドバイス
最初から高額な機体を購入するのではなく、まずは初年度に散布代行を利用する農家の方も増えています。
実際の防除効果や作業感を確かめたうえで、翌年以降に自社導入を検討するという2段階のステップが効果的です。
ご自身の作付面積と年間の防除回数をもとに、無理のない運用スタイルを選びましょう。
【Q&A】田んぼでのドローン飛行に関するよくある質問

ドローンで農薬散布をするのに免許や資格は必須?
法律上、ドローンの操縦に国家資格や免許は必須ではありません。
しかし飛行申請を通すためには、10時間以上の飛行実績や専門知識を証明する必要があります。
そのため、メーカーやドローンスクールなどの認定講習を受講する、あるいは国家資格を取得しておくのが、実務上はスムーズです。
許可を取らずに田んぼでドローンを飛ばすとどうなる?
必要な許可や承認を得ずに特定飛行を行った場合、航空法違反として1年以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
リモートIDによって機体は容易に特定されるため、無許可飛行は絶対に避けましょう。
100g未満のトイドローンでも許可は必要?
100g未満のトイドローンは航空法の規制対象外となるため、機体登録や飛行許可は原則として不要です。
しかし他人の土地を飛ぶ際の民法や、重要施設の周辺を飛ぶ小型無人機等飛行禁止法の規制は受けます。よって、どこでも自由には飛ばせません。
まとめ

田んぼでドローンを飛行させるには、単なる空撮であっても周囲の環境次第で許可が必要になり、農薬散布においては、国土交通省の許可・承認が原則必要です。
まずは機体の登録を済ませ、時間に余裕をもって包括申請を行い、日々の飛行計画通報と飛行日誌の作成を欠かさないことが重要です。
これらのルールは面倒に感じるかもしれませんが、ご自身の身を守り、周囲の信頼を得ながら安全に農業を行うための基本となります。
正しいルールを理解したうえで、安全かつ効率的な作業にドローンを活用していきましょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。ドローン専門行政書士の宮崎がお伝えしました。